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昭和61年のにあった「書面全体に斜線をひいた自筆証書遺言の効力」事案

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昭和61年6月22日に、松前さん(仮名)は「大半の財産を特定の相続人に相続させる」とする内容の自筆証書遺言を作成した。

 

その後、松前さんは平成14年に死亡したが、相続人が運営する会社の保管庫から自筆証書遺言が発見された。その遺言書は、発見当時既に開封ずみで、用紙全体の左上から右下にかけて赤色のボールペンで斜線が引かれていたが判読は可能の状態だった。

 

この状況下で遺言書の効力はあると思われますか?

 

地方裁判所の第一審と高等裁判所の第二審では、「遺言書に故意に斜線を引く行為は、民法1024条により遺言を撤回したとみなされる“故意に遺言書を破棄したとき”に該当しない」と述べ、遺言書に有効性があると判断した。

 

しかし最高裁判所は、(以下判例分の参照)

 

1.本件は,上告人と被上告人の父である亡松前さん(仮名)が作成した昭和61年6月22日付け自筆証書(以下「本件遺言書」という。)による遺言(以下「本件遺言」という。)について、上告人が、松前さん(仮名)が故意に本件遺言書を破棄したことにより本件遺言を撤回したものとみなされると主張して、被上告人に対し、本件遺言が無効であることの確認を求める事案である。

 

 

2.原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

(1) 松前さん(仮名)は、昭和61年6月22日,罫線が印刷された1枚の用紙に同人の遺産の大半を被上告人に相続させる内容の本件遺言の全文、日付及び氏名を自書し、氏名の末尾に同人の印を押して、本件遺言書を作成した。

 

(2)松前さん(仮名)は、平成14年5月に死亡した。その後、本件遺言書が発見されたが、その時点で、本件遺言書には、その文面全体の左上から右下にかけて赤色のボールペンで1本の斜線(以下「本件斜線」という。)が引かれていた。本件斜線は、松前さん(仮名)が故意に引いたものである。

 

 

3.原審は、上記事実関係の下において、本件斜線が引かれた後も本件遺言書の元の文字が判読できる状態である以上,本件遺言書に故意に本件斜線を引く行為は、民法1024条前段により遺言を撤回したものとみなされる「故意に遺言書を破棄したとき」には該当しないとして、上告人の請求を棄却すべきものとした。

 

 

4.しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。民法は、自筆証書である遺言書に改変等を加える行為について、それが遺言書中

の加除その他の変更に当たる場合には、968条2項所定の厳格な方式を遵守したときに限って変更としての効力を認める一方で、それが遺言書の破棄に当たる場合には、遺言者がそれを故意に行ったときにその破棄した部分について遺言を撤回したものとみなすこととしている(1024条前段)。そして、前者は、遺言の効力を維持することを前提に遺言書の一部を変更する場合を想定した規定であるから、遺言書の一部を抹消した後にもなお元の文字が判読できる状態であれば、民法968条2項所定の方式を具備していない限り、抹消としての効力を否定するという判断もあり得よう。ところが、本件のように赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引く行為は、その行為の有する一般的な意味に照らして、その遺言書の全体を不要のものとし、そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であるから、その行為の効力について、一部の抹消の場合と同様に判断することはできない。以上によれば、本件遺言書に故意に本件斜線を引く行為は、民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当するというべきであり、これにより松前さん(仮名)は本件遺言を撤回したものとみなされることになる。したがって、本件遺言は、効力を有しない。

 

 

5.以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして、以上説示したところによれば、上告人の請求は理由があるというべきであるから、第1審判決を取り消した上、その請求を認容することとする。よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 小貫芳信 裁判官 鬼丸かおる 裁判官山本庸幸)

 

 

として本件遺言書は効力を有しないと判断した。

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